2020年1月1日水曜日

(たぶん)(ひとりで)週刊短歌第7回

わたしの好きな瀬戸夏子の歌   水沼朔太郎

再演よあなたにこの世は遠いから間違えて生まれた男の子に祝福を
/瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end.』

下句〈間違えて生まれた男の子に祝福を〉のメッセージ性が強いから〈あなた〉と〈男の子〉が=みたいに見えるかもしれないけれど、どこまでいってもこのふたつは重ならない、テクスト上のその事実に救われる。それは〈この世は遠いから〉という接続によるものが大きいと思うけれど、同時に〈再演よあなたに〉と〈間違えて生まれた男の子に祝福を〉とを別々のわたしへのメッセージとして同時に受け取ることもできる、という不思議なねじれがある。瀬戸夏子の歌は逆説的というわけではない。

かなわない頬っぺたのように夜の空 クリスマスと浮気は何度もしよう
/瀬戸夏子『かわいい海とかわいくない海 end.』

シンプルな〈憧憬〉の歌だと思うけれど、〈夜の空〉ひとつとってもイメージが異なるから意外とむずかしい歌……なのだろうか……〈浮気は何度もしよう〉にそうはならないよ……となられると苦しいけれど〈浮気〉っていうのはクリスマスもハロウィーンもクリスマス・イブも、という〈も〉の気持ちのこと。その欲張りな感じというのは〈かなわない頬っぺた〉で端的に示される。引っぱたたきたくなるぐらい魅力的で、だけど、届かない、そのような〈夜の空〉である、と。この空には奥行きがある。到達点のように。クリスマス・イブとクリスマスとではクリスマスの方がより到達点としては高い。